悪文
『ラヴクラフト全集第7巻』をやっと読了しましたよ。 ラヴクラフトの悪文に久しぶりに難渋しながら、楽しく読めました。 そんなに期待してはいなかったんですけど。 以下、気になった作品の感想を。 『木』はラヴクラフトには珍しい、怪奇色薄めの掌編。 親友同士であるふたりの芸術家の裏切りと、その悲しい結末を描いています。 「へえ、ラヴクラフトはこんな悲劇も書くんだね」と興味深く読めました。 『忌み嫌われる家』は、次々と住人が死んでいった家の秘密をめぐる物語で、古典的な怪奇小説かと思いきや、ラストのグチャドロ具合は逸品! 是非スチュアート・ゴードンに映像化していただきたい。 『ファラオとともに幽閉されて』は、前半は何となくポオ的な味わいを思わせるものがありましたが、これもラストのグロテスクな神々の行進はラヴクラフトならでは。 と、こうして読んできて、視覚的に派手なグロさをアッピールするのが、彼以前の怪奇小説家との決定的な違いかな、と思わせられました。 しかし、彼の人種・民族偏見は、時代的なものもあるとはいえ、かなりのものですね。 初期作品の『通り』なんて、「アングロサクソンでなくてごめんちょ!」と、皮肉っぽく言いたくなりました。