ちくま文庫版『芥川龍之介全集Ⅰ』読了。 再読のものがほとんどでした。 しかし、再読してもやはり昂奮が新たになったのは、中篇の『偸盗』ですね。 盗賊に身を落とした兄弟と、盗賊の首領の女の三角関係を軸に描いたピカレスクロマン。 文体、筋立て、アクション、すべてがまったく古びていません。 「現代小説の名うての書き手がこれを書いたよ」と言われれば、そう信じてしまいそうな圧巻の出来です。 「芥川って、鼻とか芋粥でしょ?」と、国語教科書の範囲で芥川を判断している人は、まず『偸盗』を読んでほしい。 彼の創作能力の電撃のような一閃に、戦くことでしょう。 しかし、芥川は「~なのであろう、~」って文章が好きですね。 そこは好みが分かれるかもしれません。 次は、綺堂の『古今探偵十話』を読みます。