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蠅男

このブログへのアクセスは、ほとんど露西亜からなのが無気味な倉野です。 さて、海野十三『蠅男』を読み終わりました。 表題作は現代の目からすると、かなり厳しいかも。 古臭さ満点です。 乱歩の初期短篇なんかは、今読んでもまったく古びていない気がするんですが、『蠅男』の古さはどうしたものでしょう。 トコトコとかのオノマトペの多用と、「そも~であろうか」みたいな大時代な講談口調がその要因かもしれません。 しかし、戦後間もなくに書かれた『千早館の迷路』と『断層顔』は文章力も格段に向上しているし、こちらは古臭さはなく、楽しく読めました。 『千早館~』はまさに怪奇探偵小説といった趣の佳品。 ラストがちょっと唐突な気もしますが、異常な最期に圧倒されます。 もう少し長く書いたら、もっと面白くなったかも。 『断層顔』は空想科学探偵小説のこれまた佳品。 『暗号数字』は暗号ものと算数が苦手で興味もない私は、流し読みしてしまいました。 次は何を読もうかな。買ったまま積読状態の久生十蘭『内地によろしく』に、いよいよ手をつけるか……。

改竄

今年の八月に出た、岡本綺堂の光文社文庫版『狐武者』の中の『うす雪』を読んでいるんですが、綺堂的に言えば「むむ」となったわけで。 それは、やたらと「気がおかしい」という日本語的に微妙な表現が出てくること。 何だかおかしいなあと思いながら、電車の中で読み進めていたんですが、帰宅して作品社から数年前に出た『岡本綺堂探偵小説全集』の下巻にあたってみたら……やはりテキストが改竄されていました。 作品社版の『うす雪』には、ちゃんと「気狂い」と書いてある。 しかも、眉を顰めたのは、テキスト改竄について、光文社文庫版の巻末に何の断りもないこと。 こりゃあちょっといけませんや。 去年の十一月に出た、綺堂の光文社文庫版『女魔術師』には、ちゃんと「作品の時代背景に鑑み――」的な一文とともに、底本通りとした、と書いてあるのに。 どうして『狐武者』では姿勢を転換しちゃったんでしょう。 私は差別を助長するようなことは勿論言いません。 ですが文学作品は、たとえ眉を顰めるような表現が出てきたとしても、それが出版された当時のままで読みたいだけなんです。 はあー、がっかり。

麻薬

映画『シド・アンド・ナンシー』を観ました。 公開当時、今は亡き『POP GEAR』誌のコラムで酷評されていた記憶があるんですが、観てみると意外に面白かった。 シド・ヴィシャスをゲイリー・オールドマンが務めていて、最初は「似てねー、もっと目元が涼し気な役者はおらんかったんかい!」 などと思いつつも、映画というのは不思議なもので、観ていくうちにシドにしか見えなくなった笑 似てる似てないで言うと、ポールとスティーブはそっくりかもしれない。ジョニー・ロットンは似てない。 で、ナンシー・スパンゲンは……昔『D.O.A.』というパンクのドキュメンタリーでそのお姿を拝見しただけですが、この映画のナンシーはただのババアにしか見えません(失礼)。 本人はもうちょい見栄えが良かったような。 でもでも、ナンシー役のクロエ・ウェブは熱演してますよ! 「もうこのクサレ売女のせいでシドは死んだんじゃい!」と恨み言のひとつも画面に向かって言いたくなるほどのド腐れぶりを発揮しております。 まあナンシーのせいで破滅しなかったら、シドは永遠のアンチ・ヒーローにはなれなかったわけで、そこはお互い持ちつ持たれつというわけです。 日本版DVDのクレジットには、「音楽:ジョー・ストラマー」と書いてあったんで、「おっ!」と期待してみたんですが、拍子抜け……と書こうとして、IMDBを見たら、ジョーのジョの字も書いてないですね。あれ? てか、GNRのスラッシュがパンクス役で出てたんや。気づかなった。 意外な掘り出し物映画でした!

理系

東京創元から海野十三がドドッと復刊されたので、まず第一集の『獏鸚』を読み終わりました。 帆村荘六物の初期の作品は、ちょっと現代の目からすると厳しい感じですが、アンソロジーとかによく取られている『俘囚』や『人間灰』は、やはり面白いなあ。 ただ、海野十三の癖なのか、「だネ」とか「ですネ」みたいに文末の「ネ」多用が古臭さを醸し出している気はします。 あと、ネーミングのセンスが面白い。 町田狂太(普通、人の名前に狂とかつけないでしょ笑)、白丘ダリアとか。 文末の「ネ」とも関連しますが、『点眼器殺人事件』で仮名をつけた時の「チェリーとナ」には、何故か笑ってしまいました。 さてさて、次は『蠅男』の前に、ちくま文庫の芥川全集最終巻を読まねば。

黒鳥

『ブラックスワン』観ました。 幻覚妄想の描写は、ややB級ホラーめいているものの、全体的には楽しめました。 イカれ気味の支配的な母親との葛藤という点は、『キャリー』にも通ずるかな、と。 でも、ラストまで観終わって思ったのは、「狂気に陥った挙げ句とはいえ、素晴らしい踊りができたんだし、犯罪もおかしていないし、これってハッピーエンドの映画じゃね?」ってことでした。 イカれ気味なのに才能がないために何もなせず、消え去っていった自分に引き比べると、充分ハッピーな最期だったんじゃないかなあ。 皆さんは、どう思います?

怪談

河出文庫『見た人の怪談集』読了。 ほとんどは既読の作品ばかりでしたが、読むと片っ端から筋を忘れる性質なので、新たに楽しめました。 中でもよかったのは、これは未読だと思う、田中貢太郎の『竈の中の顔』! いやー、これは怖いですよ。 竈の中からひょいと出る顔が何なのかがわからないのが怖い。 そして、佐藤春夫の『化物屋敷』には、弟子とわいわい共同生活をする楽しさも伝わってきて、怪談なのにやっぱりおかしみを感じてしまいます。 で、トリは、待ってました! 角田喜久雄の『沼垂の女』! 大好きな作品です。 これをトリに選んだ選者さん、わかってるなあ。 戦後の混乱と共に希望も見える上野駅と列車の風景にニンマリしていると、沼垂に着いてから突如話は暗転、人間の業をひしひしと感じさせる展開は、肌に粟を生じさせます。 このアンソロジーの問題作は、やはり平山蘆江の『大島怪談』でしょうか。 解説者が指摘している通り、途中から人数が増えている……。 単に作者が間違えたのか、狙ってやっているのかわからないところが怖い。 なかなか楽しめるアンソロジーでした。

監禁

ジョン・カーペンターの『ザ・ウォード 監禁病棟』を観ました。 うーん、面白かった! カーペンター作品としては、異色作に入ると思います。 以下ネタバレ↓ いやー、すっかり騙されました。 あまりにショボい亡霊物のC級ホラーだ、と思って観ていたら、解離性同一症の話だったとは。 その線も、薄っすらと頭にはあったんですが、本当によくできたC級ぶりだったんで、途中で忘れてしまいました。 細かい所で、すべてが同一人物という暗示がしてあります。 (特別病棟の患者たちの飲む薬がすべて一緒、など。後から思い出して、これにはやられたー、と思いましたね) カーペンター作品といえば、超自然的な怪異を取り扱うもの、という先入観自体も、ミスディレクションになっています。 しかし、この作品の手柄は監督のカーペンターよりも、脚本にあるのは明らかです。 それほどカーペンターっぽさがない作品なので、彼のファンには不評かもしれません。 いやー、映画ってほんっといいもんですね。

別辞

『さらばあぶない刑事』をやっと観ました。 いやー、最高に面白かった! 「我々世代はあぶデカの面白さはよく知っていますからね」としじみ習慣のCMのようなことを言いたくなりましたが、正直観る前は期待と不安が入り混じっていました。 前作『まだまだあぶない刑事』がイマイチの出来だったから。 しかし、最終作となる『さらば~』は、あぶデカの面白さを存分に詰め込んだ傑作でした。 「そうそう、あぶデカはこうでなくちゃ!」とニンマリすること頻り。 以下、時々ネタバレしてます。 まずオープニングからしてユージのダンスで気障ったらしく粋に始まり、画面に惹き込まれます。 パパや落としのナカさんといった港署の懐かしい面々も姿を見せ、最終作を彩りつつ。 トオルくんの好意で、レパードも出てくるしね。 脚本も前作とは打って変わって引き締まっており、ラストまで一気! 「還暦のあぶデカってどんななんだろう」とおっかなびっくりな方、ユージは走るわタカはハーレーに乗りながらショットガンぶっ放すわで、心配ございません。 むしろ、渋みが加わった分、新たな魅力が出ていますよ。 クライマックスで、残り少ない弾を気にしつつ、タカとユージは突撃していくんですが……一体どうやって切り抜けたんだろ? って勘ぐるのは無粋ですね。 しかしあそこはトオルくんが「先輩! 応援に来ちゃいました!」と装甲車にでも乗って駈けつけてくれたら、一層盛り上がったのになあ。 ラストで、ふたりはニュージーランドで探偵事務所を開いたことになっていますが、横浜でも事務所をやってほしいな。 で、初老ながらもスタイリッシュなあぶないふたりの探偵譚を観てみたい! ドラマ化あるいは映画化希望です。 エンディングクレジットでは、満を持して今は亡き近藤課長も登場し、涙がちょちょ切れますよ~。 ぜひぜひ、ご覧あれ。

狂女

有島武郎の『或る女』を読み終わりました。 いやー、長かった。 この作品は、主人公の葉子がイケイケドンドンで調子に乗っている時よりも、落魄し始めてからの後半の方が面白いです。 賢しいくせに、時代性なのでしょうか、自立して生活していくなどということは天から頭になく、男を手練手管でたらし込んで、情人にすがりつくしか能のない女の哀れさが、濃厚な文体で描かれていきます。 「ほんっと、厭な女だなあ」しか感想が湧いてこないのが素晴らしい。 しかし読んでいて疲れました。

吸血

これまたCS放送を録画したまま放っておいた、『吸血鬼ゴケミドロ』をやっと観ました。 タランティーノが『キル・ビル』でオマージュを捧げたことで有名な映画ですが……わたくしのような凡人には、評価が難しい映画です。 人里離れた地に不時着した飛行機の乗客と乗組員が、宇宙から来た吸血生物に襲われる、といった粗筋なんですが、乗客たちがもめる→ゴケミドロに誰か襲われる→またもめる→誰か襲われる、というパターンが繰り返されるので、ちょっと飽きてきますねえ。 水や食糧がない緊迫感も、金子信雄と政治家のセンセイのくだりくらいしか描かれないし。 合間合間にヴェトナム戦争や原爆のキノコ雲のカットが挿入されたりするのですが、会話の台詞が上っ調子なせいか、特にメッセージ的に心に響くものではありません。 (まあ、制作側も、メッセージ性を隠れ蓑にして、ただショッキングなカットを入れたかっただけ、という気もするのですが) 未知の地に漂着した人々を怪物が襲う系の映画では、私は東宝の『マタンゴ』に軍配を上げたいですよ。

改変

高倉健版『悪魔の手毬歌』をやっと観ました。 日本映画専門チャンネルで放映されていたのを、録画していたんですが。 凄いです。何が凄いって、まるっきり原作を無視しています。 もうむちゃくちゃ、と言ってよい改変ぶりです。 「健さん扮する金田一がスポーツカーに乗って登場する」くらいの予備知識しかありませんでしたが、犯人も違えば筋立てもまるっきり違う。 ここまでむちゃくちゃでは開いた口が塞がりません。 まあ私も大人ですので、「横溝作品を冒瀆しとる!」と怒るわけでもなく、「退屈な映画だなァ、早く終わんねえかな」と時計をチラ見しつつ、やっと観終わった次第。 気になった点は……健さんが「姉さん云々」という台詞が「姐さん」と思わず脳内変換されてしまうところ。 あと、「ちょっと失礼」と手を出して人の前を横切る健さんの所作に、任侠映画のテイストを感じてしまった自分がいました。 終わり。 って、「あんなレアな映画観て、感想はそれだけかい!」と言われそうですが、本当に「脚本むちゃくちゃ」以外に特筆すべきところがないんですもん……。

困難

公私ともにさえない状況で、がっくりきています。 そうしたら、2週間ほど前から入眠困難に。 マイスリーでもダメ、ハルシオンでもダメ、と八方塞がりな状況。 アモバンでも処方してもらおうかな。 奇蹟的に一旦寝入りに着くと、ぐっすり眠れるのだけど、とにかく寝入られなくて苦しい。 どうしたもんじゃろのう(©TOTOねえちゃん) 今日も眠れずにこんな時間になった。 アメスピをただプカプカ吹かすばかり。 徹夜で仕事に行くしかないですな。 眠くて眠くてポンコツだろうから、仕事にならないとは思うけど。 蒲団に入ったら、気絶するように寝たい!

太鼓

最近Youtubeで、オリジナル・メンバーのスティーブンが参加した時のGuns n' Rosesの動画をよく観ています。 今日は、ドジャー・スタジアムの最新公演を観た。 最高!! やっぱスティーブンのビートが加わると、ケミストリーが全然違うね。 薬物依存で「もう一線への復帰はダメかもなあ」と思ったこともあったけど、何の何の、体型も維持していて一番元気そうにも見える(笑) アクセルの声も、心なしか気合が入っていて嬉しそう。 ダフも時々ドラムキット前に行って、オリジナルのリズム隊復活を喜んでいるみたい。 私は、テクニック云々よりも、ノリ重視のドラマーが好きなんです。 スティーブン・アドラー以外では、例えば、元SODOMのクリス・ウィッチハンター、元NAPALM DEATHのミック・ハリス、元CARCASSのケン・オーウェンなんかね。 全部「元」なのが悲しいけど。 プリミティブな衝動に訴えかけるようなドラムにグッと来るのです。 とにかく、スティーブン復帰のライブは涙腺に来まくりですよ。 日本公演があったら、彼も参加してほしいなあ。 長生きしておくれよ、スティーブン!

物怪

両国の夏、妖怪の夏、というわけで、江戸東京博物館で開催中の大妖怪展に行ってきました! いやー、夏休みの日曜ということで、とにかく人が多かった! 大混雑! 低い位置に展示してある絵巻物なんかは、かなり見づらかった。 しかし、個人的な目玉のひとつ、『稲生物怪録絵巻』はちゃんと見てきました! 稲垣足穂が小説化したのを読んでいたので、興味深く見ましたよ。 で、もうひとつの個人的な目玉、コマさんは写真撮影禁止でちょっとがっかりでした。 でも、ジバニャン、ウィスパーなどのボツになった初期案が見られて満足。 お土産にこれまたコマさんグッズを買い込もうと思ってたんですが、Tシャツくらいしかなかった。 ので、土偶と妖怪ウォッチのコラボTシャツを購入。 あと、勿論、稲生物怪録のポストカードも♪ 人が多くて疲れたけど、かなり満足度の高い展示でしたよ。 でも妖怪展に土偶は、やっぱりムリヤリかなあ……。

涅槃

本当にお久しぶり。 最近気になった記事。 上司が読んでいるのを横から見て、もうその新聞を捨てちゃったので、しかとは憶えていないけど……最近のメディカルトリビューン紙だったかで、アンドロイド研究の第一人者・石黒教授がこんな興味深いことをおっしゃってました。 「無機物から偶然生まれた有機物である我々は、その元の状態である無機物へと進化していく。これは新しい進化論です」みたいなことを。 それって『スノウブラインド』で夷戸に言わせた涅槃原則的進化論じゃーん! 確か夷戸には「無機物から生まれた人間は、原初の状態である無機物へと還っていく」とか語らせたような(面倒くさいので原典に当たらず笑) 思いつきで書いただけだったが、もしかして自分、すごいことを思いついてたのか?! ま、その前に、私の涅槃原則的進化論は、フロイトからパクったものなので、大きなことは言えませんがね。 アンドイロド研究の泰斗と同じことを思いついたことで、ちょっと嬉しくなったわけでした。 これからはもっとブログを頻繁に更新します……。

応募

お久しぶり。 六月二十日締切の「オール読物新人賞」に、今日原稿を応募しましたよ。 傑作かどうかはわからないけど、かなりの力作に仕上がったと自分では思っています。 作品のジャンルは、うーん、何だろ? まあ広義の怪奇短篇ですかねえ。 奇妙な犯罪小説とも言えるかな。 せめて一次はすんなり突破して、できれば、本当にできれば最終候補作品に残りたい! そうしたら、再デビューの道も開けるんではないかと思うので。 神様お願い! では、次の作品を執筆しつつ、結果を待つとします。 いやー、ドキドキするわー。

違和

そういえば、かなり前に『妖怪ウォッチ コマさん ~ハナビとキセキの時間~』を買って読んでいたのである。 コマさん好きだから。 結論から言うと、あまりしっくりこなかった。 「泣ける妖怪ウォッチ」という惹句がまず個人的にちょっと。 「泣ける!」とか「感動!」とかに反感を覚える性質なので。 あからさまに泣きにいかせようとするより、くだらないけどいつの間にかほっこり、みたいな方が好き。 それと、コマさんの造形が、アニメ版に比べて目がでかくて可愛く描いてあるけど、それも。 媚びた感じがして、あんまりねえ。 ま、でも、結局は読んで泣いたんですけどね。 ひとつ気になったのは、この話はコマさんがケータたちに会う前と考えられるけど、すでにがま口型のポシェットを持っているのは何故? それと、「もんげー変化葉っぱ」が「もんげー便利葉っぱ」に変えられているのも、細かい所だけど気になった。 でも、それなりに面白いので、興味がある方は是非。

淡々

衝動的にTwitterを始めたんズラ。 な、何を今更って感じですが。 それはともかく、鈴木三重吉の中篇『桑の実』を読み終わりました。 すごい、三重吉すごい! ある離婚した絵描きのところへ、住み込みで女中に入った「おくみ」という女性の話なんですが、とにかく淡々と平淡に日常が綴られていく中、ほんのりと情感が迫ってくる。 初期短篇集『千鳥』とは違い、幻想味を排した上で、平淡な話を見事に成立させているのだから、三重吉の力量のほどが知られます。 後に誰でもが知っている童話作家へと三重吉は転身するわけですが、こういう小説を書き続けてほしかったなあ。 昔、新潮文庫から出た『赤い鳥傑作集』を持ってて、あの雑誌の充実ぶりはよく承知していますが、それにしてもちょっと惜しいな、と思ってしまいました。 『桑の実』、お薦めです。 次は光文社文庫から出た岡本綺堂の『女魔術師』を読みます。 ところで、中公文庫から出ていた岡本綺堂読物集の第六巻『異妖新篇』はもう出ないんですかねえ。 刊行間近のアナウンスがされてから、一年半は経っていると思いますが……。

希望

さあ、オール読物新人賞の原稿はできたから、次は11月の日本ホラー小説大賞に取りかからねば。 って、せっかく一応物書きとしてデビューしたのに、またイチからやり直しとは心が折れそうになりますね。 ほんとは、どっかの出版社さんが「ちょっとウチから『弔い月~』を出してやるか! ヒマだからな!」とばかりに、救いの手を差し伸べてくれないだろうか、と儚い希望を持っているんですが……。 やっぱ、賞を獲っていない&売れていない物書きには、そんなうまい話はないんですかね。 このブログには私のメアドを掲げてあるんで、「倉野に仕事させたい!」という奇特な出版社さんがあれば、どうぞメッセージちょうだい! では。

過眠

最近滅茶苦茶眠い私。 休日なんて、ほんの数時間しか起きてませんわ。 前から過眠傾向にはあったけど、ここ最近加速がついている。 とにかく仕事にも支障を来し始めているので、なんとかせねば。 お肉をしゃぶしゃぶするような薬剤を使うとお手手が後ろに回るので、バタフライナイフを腿にぶっ刺す(©ゴリパラ見聞録)とかの合法的な手段で。 ところで、前項で言及した、オール読物新人賞に出す原稿を書き終えました。 ちょっと短過ぎるかな、とも思うのですが、これで行こうと思います。 小手調べ的に。 あとは応募券のために、雑誌を買わねばね!

徒然

特に書くことはないけど、とりあえず更新はしておきたいので、退屈しのぎに書くのである。 話題其の壱。 「ゴリパラ見聞録」の一献のパートを見ていていつも思っていたのが、「芋焼酎をソーダ水で割るのって邪道じゃね?」ってこと。 金宮とかならいざ知らず、本格焼酎を割るのはお湯か水だと教育されてきたので……。 ところがですよ、手持ちにある白霧を、試しに綾鷹で割ってみたら……これが美味い!! 芋の香りと旨みに爽やかな緑茶の風味がマッチしております。 おお、なんでこの味を今まで我は知らなんだか、と自分を責めながら飲む日々です。 話題其の弐。 私が青春時代から大好きなL.A.Guns、今はヴォーカルのフィルとギターのトレイシーは別れて活動しているわけですが、でありながらも、ちょこちょこふたりは共演しているわけで。 で、5月あたりに開催されるフェスにも、ふたりがL.A.Guns名義でアコースティックライブをするらしいっす。 もうそれならいっそ元鞘に納まってよ! と。 そうしたら、以前のように熱狂的に応援できるのに。 誰か忠告してやってください、パーマネントな形でL.A.Gunsとしてリユニオンするようにと。 まったく、ふたりとも五十過ぎてんだから、仲良く喧嘩しなさい。 其の参。 出版しても本が売れないので、新刊が出せなくなった私ですが、その状況を打破するべく、新人賞に応募することにしました。 賞を獲って、名を売って、新刊出版、と繫げるべく。 手始めに、六月〆切のオール読物新人賞に応募しようと思っております。 こうなったら、なりふり構っておられません。 お蔵入りになった入魂の長篇第三作、『弔い月の下にて』を出版するまでは、死んでも死にきれましぇん。 そのために、賞を獲ってやりますばい。 獲れるのは、いつになるかはわかりませんが。 オール読物新人賞、何だか二千近く応募数があるらしいので、どこまで勝ち進めるかわかりませんが、オール読物誌上で発表される選考経過に、クラノマニアの方は手に汗を握ってくだされば幸いです。 とか言っといて、一次で落ちたりして。 つーことで、アスタラビスタ、ベイビー!

狛犬

おひさ。 DVD『妖怪ウォッチ 特選ストーリー集 白犬ノ巻』を買いましたよ。 「コマさん巾着ズラ」付きです! 内容は全部レンタルで借りてみてますが、それでも手元に置いておきたいので購入。 これが売れて、続篇も出てくれると嬉しい。 ちなみにコマさんの話で好きなのは、「コマさんと行く はじめての家電量販店」&「クロがきた!」と、コマサンタかな。 前者はルンバとコマさんの触れ合いが面白いし、コマサンタはコマじろうの兄思いに涙がちょちょぎれる。 あ、それでいくと「田舎者はバラ色に」の最終回で、コマさん兄弟が河畔でおにぎりを頬張るのもいいなあ。 えっと、読書は今『モーパッサン短編集第三巻』を読んでます。 最近、現代小説に珍しく浮気してました。 『コインロッカーベイビーズ』読んじゃったのです。 初の村上龍作品だったけど、面白かった! では~。

千鳥

鈴木三重吉の初期短篇集『千鳥』を読み終わりました。 おそらく現代の人には、「三重吉が来て、鳥を御飼いなさいという」の漱石『文鳥』で名前を知っている人のほうが多かろうかも知れません。 この短篇集には、童話作家に転身する前の三重吉の処女作他が収められています。 これがねえ、いいんですよ。 三重吉自身、ほとんど空想で書いた的なことを解題で言っていますが、これがうまく功を奏してるんです。 漱石の『夢十夜』や百閒の諸作品とはまた違った味わいの、長い夢を見ているような、それでいてしっとりと情緒が感じられる、幻想的作品に仕上がっています。 処女作『千鳥』もいいんですが、というか収録作はどれも素晴らしいのですが、『おみつさん』と『烏物語』は何だか若い時の母親の夢を見て、母親が懐かしくなるような、そんな感じがします。 と三重吉を絶賛していますが、百閒の随筆によると、彼は私生活では、とんでもない人物だったようです。  (以下の三重吉伝説は、百閒作の随筆で読んだものですが、面倒で原典にあたっていないので、記憶違いがあるかもしれません) ・漱石の口利きで、千葉かどこかの学校に赴任したものの、大酒をかっくらって大喧嘩をやらかし、大怪我で入院。見舞いに来た漱石と門下の人たちに、ひたすら「私の不徳の致すところで」を繰り返したため、さすがの漱石も呆れて笑うしかなかった。 ・地方に赴く用事があると、「地酒なんか飲めるか!」と言い放ち、東京から樽酒を担いでいかせた。 ・当時、ダーウィンの進化論が訳されたが、誤訳があったそうな。三重吉は百閒たちと飲んだ後、ある家の前へ皆を連れてきた。それは進化論の翻訳者の家で、三重吉は聞こえよがしに大声で「ここが誤訳の大家の先生の家だぜ!」と呼ばわった。 等々。 豪快さんですね。酒癖が悪かったようで。 そんな三重吉が好きです。

焼酎

私、大のビール党で合間に日本酒、たまにウイスキーという感じでしたが、ダイエット面とコスパを考えて、最近本格焼酎を飲んでいます。 本当は芋焼酎は大嫌いだったんです。 あのエグ甘い感じが苦手で。 しかし、そうも言っていられず、最近は毎日飲んでいます。 スーパーとかで売っている比較的手に入りやすい芋焼酎を飲み比べてみましたが、断然、霧島酒造の物が安定してウマイですね。 クセが強すぎることなく、それでいて芋焼酎の骨格もしっかりして、飲みやすい。 黒霧島より白霧島(昔の「霧島」ね)のほうが、好きかな。 白霧島を、水割りかロックにして飲んでおるのです。 この前、友人宅で鍋パーティーをして、ついつい4合瓶をロックで空けちゃいました。 飲みすぎ注意……。 そういえば、内田百閒が「焼酎を飲んでいると鼻が赤くなる」と随筆で言ってましたが、本当なんでしょうか? 酒さ(「さ」の漢字がわからん)と焼酎飲酒歴の因果関係を調べた研究は、今のところないようですがね。 では。

悲劇

久しぶりにMAYHEMのDeadがヴォーカルをやっていたMORBIDの音源が聴きたくなって、MAYHEMとのブートレッグのスプリット盤『A tribute to the black emperors』をパソコンに入れてみたら……聴けなかった。 おかしいなあ。 昔のパソコンでは聴けたのに。 悲しすぎる。 脳漿ぶちまけジャケットの『The dawn of the black hearts』は問題なく聴けました。 ちなみに、MAYHEMで一番好きなアルバムは、ライブ盤だけど、『Live in Leipzig』です。 昔はよく寝ながら聴いていた。 Deadの声がかっこよし。 好きな曲は「Chainsaw Gutsfuck」。 ま、彼らの音源は、アッティラの呪詛のようなヴォーカルが聴ける1stフルまでしか持ってないんだけどね。 ということで、寝まーす。

奇人

ただ今、森鷗外による史伝『渋江抽斎』を読んでおりまふ。 津軽藩の御典医で、後に幕臣になった医学者渋江さんの話ですよ。 世間一般には、退屈な史伝といった評価なんだろうなあと思いながら、渋江抽斎の関係人物をモノマニヤックに叙述する文章に酔っていました。 と……やっぱり読書は面白いですねえ、読み進むうちにニヤニヤしてくる登場人物が現れました。 その名は森枳園。医師にして考証学者、主人公渋江抽斎と『経籍訪古誌』をものした大人物、大医学者です。 この森先生が、天晴な奇人なんですわ。 大名阿部家の御典医だったんですが、芝居気違いというか、とにかく芝居に関してはマニヤなんですね。 趣味が嵩じて、舞台にまで上がって端役をやるようになった。 すると、たまたま観劇に来ていた阿部家の御殿女中が見て、「あれ、森先生じゃね?」と。 噂は殿様まで伝わり、遂に追放の憂き目に遭います。 しかし森先生、銭は一文もなくとも、気概は捨てませんや。 静岡辺りまで夜逃げするも、助産婦、獣医、骨接ぎ、なんでもやってとにかく家族を食わせ、爪に火を点すようにお金を貯めていくのです。 そうこうするうちに当地の素封家の援助で「江戸の大先生」として開業をします。 それが評判になり、患者はひきも切らず、数年して江戸に復帰できることになります。 しかし芝居気違いの森先生、そこは違いますや。 お召縮緬の着物を着て、海老鞘の脇差を差し、歩くときには褄を取って、剝身絞の褌を見せていたそうなんです。 七代目団十郎の真似なんですな! そこで江戸っ子が「成田屋!」と声を掛けようものなら、森先生、立ち止まって、わざわざ見得を切ってみせたそうです。 いやあ、日本男子の本懐ここにあり。 男とは、こう傾いていたいものですな。 『渋江抽斎』、そんなこんなで意外と面白いッス! 追記:「渋江抽斎は幕臣になった」と途中まで読んで早とちりして書いていましたが、どうなんでしょ? 幕府管轄の医学校の講師で、将軍家慶に謁見し、扶持も貰っていましたが、本籍は津軽藩というのが正しいのですかね。色んな人物が入り組んでいるので、少しく誤解があるかもしれません。

悪意

電車の中で隣に座った人が本を読んでいると、「何を読んでるんだろう」とついつい覗いてしまう私ですが、今日地下鉄のなかにいた中年の婦人は、なんとケッチャムの『隣の家の少女』を読んでいた……。 度胸あるなあ。 本屋のカバーもかけずに、表紙むき出しだったし。 と言いつつ、実は私はケッチャムは読んだことはありません。 人間の悪意をこれでもかと抉り出したような作品には、嫌悪こそ覚えるものの、興味はちょっと……。 悪意との直面は、現実世界だけで充分ズラ。