悲惨

齋藤秀昭選『明治深刻悲惨小説集』(講談社文芸文庫)を読み終わっていました。

いやー、もうタイトル通り、貧窮の人生の闇黒、悲惨のオンパレード!
これでもか、これでもかと、つらい物語が続きます。

就中、よかったのは川上眉山『大さかずき』、前田曙山『蝗うり』、広津柳浪『亀さん』、小栗風葉『寝白粉』、樋口一葉『にごりえ』あたりでしょうか。

特に一葉は恥ずかしながら初読だったのですが、深い感銘を受けました。
悲惨続きで多少飽きてきた本書の最後をぴりりと〆てくれます。
ただ悲惨なだけじゃない、悲惨さの中にも、しっとりとした情感があります。
さすが天才! と唸らされる出来でした。

それともうひとつ驚きだったのは、『寝白粉』と徳田秋声の『藪こうじ』に見られる、被差別部落のテーマ。
部落差別を扱った小説と言えば、藤村の『破戒』が有名ですが、それでけだなく、社会の暗部を抉った悲惨小説群にも、ちゃんとこの部落問題が扱われていたのだな、と。
「新平民」と呼ばれ依然として(今もなお)続く差別を、これらの作家が取り上げて、糾弾していた明治という時代の文士に喝采を送りたくなります。

本書は特にお薦めです。ちょっと高いですが、是非手に取って明治の暗部をその目にしてください。


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