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蠅男

このブログへのアクセスは、ほとんど露西亜からなのが無気味な倉野です。 さて、海野十三『蠅男』を読み終わりました。 表題作は現代の目からすると、かなり厳しいかも。 古臭さ満点です。 乱歩の初期短篇なんかは、今読んでもまったく古びていない気がするんですが、『蠅男』の古さはどうしたものでしょう。 トコトコとかのオノマトペの多用と、「そも~であろうか」みたいな大時代な講談口調がその要因かもしれません。 しかし、戦後間もなくに書かれた『千早館の迷路』と『断層顔』は文章力も格段に向上しているし、こちらは古臭さはなく、楽しく読めました。 『千早館~』はまさに怪奇探偵小説といった趣の佳品。 ラストがちょっと唐突な気もしますが、異常な最期に圧倒されます。 もう少し長く書いたら、もっと面白くなったかも。 『断層顔』は空想科学探偵小説のこれまた佳品。 『暗号数字』は暗号ものと算数が苦手で興味もない私は、流し読みしてしまいました。 次は何を読もうかな。買ったまま積読状態の久生十蘭『内地によろしく』に、いよいよ手をつけるか……。