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夢想

新年に入って、『芥川追想』(岩波文庫)、小酒井不木『疑問の黒枠』(河出文庫)、浜尾四郎『鉄鎖殺人事件』(河出文庫)、ルソー『孤独な散歩者の夢想』(岩波文庫)を読み終わりました。 前三作の感想は簡単に。 『芥川追想』:芥川も痔疾で苦しんでいたとは。尾籠な話だが、そこに共感。収録中、「敗戦教官芥川竜之介」が一番興味深く読めた。大正時代はいい時代だったんだなあ。 『疑問の黒枠』:不木はやっぱり短篇がいいと思う。この長篇はあまり……。 『鉄鎖殺人事件』:恋愛に狂ったワトソン役の行動に苛々。でも無機質な印象を受けた『殺人鬼』よりは面白く読めた。でもでも、浜尾四郎の最高傑作は、何といっても短篇『不幸な人々』ですよ! で、ルソーの『孤独な~』なんですが……「深い感銘を与える書」みたいなことが表紙に書いてありますが……どこが? という感じ。 まあ、これを読むきっかけは、『臨床精神医学』誌の「パラノイア特集」で取り上げられていたことで、興味を持って読んだのですね。 晩年のルソーはパラノイアだった、という論文があったのです。 それで、同じパラノイア心性を持つ者として、読まなきゃなるまい、と。 パラノイアの随筆といえば、大著『シュレーバー回想録』をまず思い出しますが、あれほど直接的・壮大な妄想城郭を築いているわけではありません。 しかし、そこここに迫害妄想・追跡妄想がほんのりと漂い、「ああ、これはイッちゃってるわ」と読んでいて満足しました。 妄想に対する対処として(ルソー自身は、勿論、現実の脅威と思っていたわけですが)、諦観、無関心、自尊心をなくすことを挙げていて、それは大いに参考になりました。 (パラノイアが自身を嘲笑われているなどと感じるのは、自尊心の過度な肥大だと私自身も感じますからね) 読んでいて、不快な念に囚われたのは、生まれた子供をことごとく孤児院に送ったことを正当化している件です。 それと、人生で満足だった瞬間として挙げられている多くが、知らない子供や廃兵に施しをしたとか菓子を買ってあげたとかいう挿話な点。 偽善というか、自己満足というか、自己欺瞞というか、「本当にひどい奴だな!」と。 まあ、人格の清廉さと業績はイコールではないのは充分承知していますが……それでもねえ。 妄想対処策以外で、この本に共感・感動した方の意見が聴い