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10月, 2016の投稿を表示しています

監禁

ジョン・カーペンターの『ザ・ウォード 監禁病棟』を観ました。 うーん、面白かった! カーペンター作品としては、異色作に入ると思います。 以下ネタバレ↓ いやー、すっかり騙されました。 あまりにショボい亡霊物のC級ホラーだ、と思って観ていたら、解離性同一症の話だったとは。 その線も、薄っすらと頭にはあったんですが、本当によくできたC級ぶりだったんで、途中で忘れてしまいました。 細かい所で、すべてが同一人物という暗示がしてあります。 (特別病棟の患者たちの飲む薬がすべて一緒、など。後から思い出して、これにはやられたー、と思いましたね) カーペンター作品といえば、超自然的な怪異を取り扱うもの、という先入観自体も、ミスディレクションになっています。 しかし、この作品の手柄は監督のカーペンターよりも、脚本にあるのは明らかです。 それほどカーペンターっぽさがない作品なので、彼のファンには不評かもしれません。 いやー、映画ってほんっといいもんですね。

別辞

『さらばあぶない刑事』をやっと観ました。 いやー、最高に面白かった! 「我々世代はあぶデカの面白さはよく知っていますからね」としじみ習慣のCMのようなことを言いたくなりましたが、正直観る前は期待と不安が入り混じっていました。 前作『まだまだあぶない刑事』がイマイチの出来だったから。 しかし、最終作となる『さらば~』は、あぶデカの面白さを存分に詰め込んだ傑作でした。 「そうそう、あぶデカはこうでなくちゃ!」とニンマリすること頻り。 以下、時々ネタバレしてます。 まずオープニングからしてユージのダンスで気障ったらしく粋に始まり、画面に惹き込まれます。 パパや落としのナカさんといった港署の懐かしい面々も姿を見せ、最終作を彩りつつ。 トオルくんの好意で、レパードも出てくるしね。 脚本も前作とは打って変わって引き締まっており、ラストまで一気! 「還暦のあぶデカってどんななんだろう」とおっかなびっくりな方、ユージは走るわタカはハーレーに乗りながらショットガンぶっ放すわで、心配ございません。 むしろ、渋みが加わった分、新たな魅力が出ていますよ。 クライマックスで、残り少ない弾を気にしつつ、タカとユージは突撃していくんですが……一体どうやって切り抜けたんだろ? って勘ぐるのは無粋ですね。 しかしあそこはトオルくんが「先輩! 応援に来ちゃいました!」と装甲車にでも乗って駈けつけてくれたら、一層盛り上がったのになあ。 ラストで、ふたりはニュージーランドで探偵事務所を開いたことになっていますが、横浜でも事務所をやってほしいな。 で、初老ながらもスタイリッシュなあぶないふたりの探偵譚を観てみたい! ドラマ化あるいは映画化希望です。 エンディングクレジットでは、満を持して今は亡き近藤課長も登場し、涙がちょちょ切れますよ~。 ぜひぜひ、ご覧あれ。

狂女

有島武郎の『或る女』を読み終わりました。 いやー、長かった。 この作品は、主人公の葉子がイケイケドンドンで調子に乗っている時よりも、落魄し始めてからの後半の方が面白いです。 賢しいくせに、時代性なのでしょうか、自立して生活していくなどということは天から頭になく、男を手練手管でたらし込んで、情人にすがりつくしか能のない女の哀れさが、濃厚な文体で描かれていきます。 「ほんっと、厭な女だなあ」しか感想が湧いてこないのが素晴らしい。 しかし読んでいて疲れました。

吸血

これまたCS放送を録画したまま放っておいた、『吸血鬼ゴケミドロ』をやっと観ました。 タランティーノが『キル・ビル』でオマージュを捧げたことで有名な映画ですが……わたくしのような凡人には、評価が難しい映画です。 人里離れた地に不時着した飛行機の乗客と乗組員が、宇宙から来た吸血生物に襲われる、といった粗筋なんですが、乗客たちがもめる→ゴケミドロに誰か襲われる→またもめる→誰か襲われる、というパターンが繰り返されるので、ちょっと飽きてきますねえ。 水や食糧がない緊迫感も、金子信雄と政治家のセンセイのくだりくらいしか描かれないし。 合間合間にヴェトナム戦争や原爆のキノコ雲のカットが挿入されたりするのですが、会話の台詞が上っ調子なせいか、特にメッセージ的に心に響くものではありません。 (まあ、制作側も、メッセージ性を隠れ蓑にして、ただショッキングなカットを入れたかっただけ、という気もするのですが) 未知の地に漂着した人々を怪物が襲う系の映画では、私は東宝の『マタンゴ』に軍配を上げたいですよ。

改変

高倉健版『悪魔の手毬歌』をやっと観ました。 日本映画専門チャンネルで放映されていたのを、録画していたんですが。 凄いです。何が凄いって、まるっきり原作を無視しています。 もうむちゃくちゃ、と言ってよい改変ぶりです。 「健さん扮する金田一がスポーツカーに乗って登場する」くらいの予備知識しかありませんでしたが、犯人も違えば筋立てもまるっきり違う。 ここまでむちゃくちゃでは開いた口が塞がりません。 まあ私も大人ですので、「横溝作品を冒瀆しとる!」と怒るわけでもなく、「退屈な映画だなァ、早く終わんねえかな」と時計をチラ見しつつ、やっと観終わった次第。 気になった点は……健さんが「姉さん云々」という台詞が「姐さん」と思わず脳内変換されてしまうところ。 あと、「ちょっと失礼」と手を出して人の前を横切る健さんの所作に、任侠映画のテイストを感じてしまった自分がいました。 終わり。 って、「あんなレアな映画観て、感想はそれだけかい!」と言われそうですが、本当に「脚本むちゃくちゃ」以外に特筆すべきところがないんですもん……。