狐狸

岩波の『芥川竜之介随筆集』読了。
面白かった!

友達がうんこを漏らす話がふたつ出てきて、そのうちのひとつは「喜劇中の喜劇」と芥川は言っております。
憂鬱な文豪も、うんこの魅力には勝てなかったようで。

その他興味を持った話で、芥川のお父さんが狐に化かされる話があるんですが、最近私は思っています。
昔の狐狸には、人をだます力があったのではないかと。

と言っても、それは人間側の能力が必要なんです。
昔の人間は、「狐狸には化かされる」と本当に信じていたので、夜道を歩いていて狐狸を見ると、「化かされるのではないか」という恐れから、一種の暗示にかかった状態になる。
そして、朦朧とした状態でドブに転げ込んだりして、「化かされた!」となるわけ。

『近代異妖篇』で岡本綺堂は、狐狸に化かされる現象を「動物磁気(今でいう催眠)」と喝破していますが、おそらくそれが当たっているでしょう。
狐狸と人間の相互の力が相まって、「化かす」という現象を起こさせていたのではないかと。

しかし近代化が進み、人から妖異を信じる力を失わせ、都市化の進行で狐狸も行き場を失い、滅びていく過程で「化かす」能力を失い、無味乾燥な現代に至ったと思います。

私が今住んでいるところは、東京二十三区でも辺境地区なので、たまに狸の姿を見かけます。
一度化かされてみたいんですが、未だそんな体験をしたことはありません。
勿体ない!

では、次はちくま文庫の『芥川龍之介全集 Ⅰ』を読みます。
岩波文庫や新潮文庫には取られていない作品も入っているので、楽しみ。
それが全集のいいところ。



コメント

このブログの人気の投稿

播摩

再開

悲惨