山岳

鷗外『大塩平八郎 堺事件』(岩波文庫)を読み終わりました。
一応「歴史小説」と銘打ってはいますが、現代の歴史小説的な読物を期待すると、肩透かしを喰らうかもしれません。
淡々と叙述が進みます。
『堺事件』のほうは、凄絶な切腹の有様に、度肝を抜かれるでしょう。

で、岡本綺堂他『山の怪談』(河出書房新社)も読み終わったわけで。
こちらは山の怪異に関する民俗学者の読物、山をモチーフにした怪談小説、登山家の怪奇な随筆を収めてあります。

山の怪談小説に関しては、小泉八雲、綺堂、志賀直哉辺りは定番の作品を収録してあるので、既読の方が多いかも。

中でも面白かったのは、工藤美代子『行ってはいけない土地』、西丸震哉『岩塔ヶ原』、沢野ひとし『縦走路の女』です。

『行ってはいけない土地』は、ある精神状態の時に訪れると引き込まれてしまう山(東京近郊のT尾山?)の恐怖を描いた話。
引き込まれてしまった女性が、鏡台の前で泣きながら髪を梳り続け、やがて自殺したというところには、ゾッとします。

『岩塔ヶ原』は、単なる遭難者の幽霊を見た話かと思いきや、最後にアッと言わされること請け合い。

『縦走路の女』は、怪異の中にもどこか悲しさを感じます。

お薦めですよ。

次は……何にしよう。二葉亭の『平凡』を読もうかな。

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