心中

森田草平の『煤煙』読了。
極度のイゴイスト男と、ボーダー女の道ならぬ恋愛物語――と言ったら身も蓋もありませんわな。
それくらいどの登場人物にも感情移入できません。

主人公・要吉は、物語の途中で子供を亡くすんですが、それが漱石の『彼岸過迄』や鷗外の『金毘羅』、あるいは志賀直哉の『和解』といった「幼い子供死んじゃう系小説」と違って、主人公は大した感慨を起こさないので、それでこちらにも何もぐっとくるものがありません。

それに何と言ってもヒロイン朋子が徹頭徹尾異常なパーソナリティのように描かれているので(境界性パーソナリティ障害っぽく)、これまた共感を厳として遮ります。
(しかし、モデルである平塚らいてうは、こんな描かれ方をして、怒らなかったんですかねえ?)

面白いことは面白いですが、読んでいると、主人公たちへの不快感で、段々眉間に皺が刻まれていく感じの小説です。

しかし「クラスターB系の男女が恋をするとこうなる」ということを描いた点では、出色の出来でしょう。
お暇なら読んでね。

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