怪談

河出文庫『見た人の怪談集』読了。

ほとんどは既読の作品ばかりでしたが、読むと片っ端から筋を忘れる性質なので、新たに楽しめました。

中でもよかったのは、これは未読だと思う、田中貢太郎の『竈の中の顔』!
いやー、これは怖いですよ。
竈の中からひょいと出る顔が何なのかがわからないのが怖い。

そして、佐藤春夫の『化物屋敷』には、弟子とわいわい共同生活をする楽しさも伝わってきて、怪談なのにやっぱりおかしみを感じてしまいます。

で、トリは、待ってました! 角田喜久雄の『沼垂の女』!
大好きな作品です。
これをトリに選んだ選者さん、わかってるなあ。
戦後の混乱と共に希望も見える上野駅と列車の風景にニンマリしていると、沼垂に着いてから突如話は暗転、人間の業をひしひしと感じさせる展開は、肌に粟を生じさせます。

このアンソロジーの問題作は、やはり平山蘆江の『大島怪談』でしょうか。
解説者が指摘している通り、途中から人数が増えている……。
単に作者が間違えたのか、狙ってやっているのかわからないところが怖い。

なかなか楽しめるアンソロジーでした。

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