巨星

ふー、小宮豊隆著『夏目漱石』を読了。

上巻はいまひとつ乗り切れず、中巻では「倫敦時代とその直後の漱石は決して精神病者ではない」という説に苦笑しましたが、『猫』を書いて作家として出発した以後は、すこぶる楽しく読めましたよ。

人生、生と死、その他もろもろの人間にまつわることに思索を巡らし続け(まあ、小宮氏の解釈なんですがね)、作品に織り込み続けた漱石には、やはり敬服せざるを得ません。

中巻の解説でも触れてある通り、小宮氏はもうちょっと妻鏡子さんの肩を持ってやってもいいんじゃないか、とは思いましたが(漱石は決して一時的に精神錯乱に至ったのではなく、周りの無理解が悪かったと説いている点で)。

小宮氏をはじめとして、森田草平、鈴木三重吉などの初期からの弟子が、漱石を理解せず、彼から次第に離れていった点を厳しく自己批判している点は、好感が持てました。

文壇という宇宙で夏目漱石は今も光彩陸離たる巨星です。
私などは宇宙空間に漂う塵にも等しい存在ですが、思索し続けるという姿勢、精神の高みへと歩み続ける姿勢を少し見習わねばな、と思わされました。

と、被影響性の高い倉野氏なのでした。

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