面影

二葉亭『其面影』(岩波文庫)を読み終わりました。

将来を嘱望された法学士・小野哲也は、今ではしがない教員生活をしながら、姑と嫁に冷遇されている。そんな彼の唯一の生活の慰めは、出戻りの義妹・小夜子の存在だった。しかし、小夜子とちんちんかもかもになり、哲也は家族を捨てようとするが……という話。

救いのない話です。
哲也の末路が悲惨過ぎる。
翻って、小夜子はしたたかやな~、と男の私は思ってしまう。

外面は柔弱ながら、不倫の恋をしっかり味わい、相手が家族を捨ててくれないと見るや、すぐに男を見限って、自分は綺麗綺麗な信仰を旨とした生活に入る。

なんやねん、お前は! と憤ってしまいます。
嫁の時子による、「小夜子は油断のならん奴」みたいな評価が一番当たっていたのでしょう。

男を堕落させる、男の敵であり、女の敵でもある(こういう女を女性は一番嫌いそうな気がする)。

読んでいて、苦々しい気分になりました。
でも、そんな姦婦小夜子を思いきれない哲也も、弱いんだよなあ。
ま、強かったら、友人の葉村みたいに出世しているか。

そんなこんなで、面白かったです。
二葉亭は、『平凡』も手に入れて読んでみよう。

次は、鷗外『大塩平八郎 堺事件』を読みます。

コメント

このブログの人気の投稿

播摩

再開

悲惨