異妖

前項の「甲州」は二重の意味がかかっていたのに、読者諸賢は気づかれたでしょうか。
『花子とアン』の舞台のひとつである甲府と、黒田長政公は甲斐守でして、「甲州」と呼ばれていたので、それをかけました。
まあ、そんなことはどうでもいいんですけどね(懐かしの、みつまJAPAN的に)。

綺堂の『近代異妖篇』読了。
『青蛙堂鬼談』の拾遺的な書かれ方をした本篇、格別であったのは『水鬼』です。
幽霊藻の伝説を縦糸にして、横糸に不実な男を殺害する凄惨な事件を織り込んだこの物語、綺堂の筆ののり方も他とは違うように思われます。

男を殺害する娘は、神経的な病だったのか、それとも官女に祟られているのかーー?
ニューロティックな恐怖と、古典的怪異談のあわいを突いたこの作には、大変勉強させられました。
今私が書いている短篇が、同じようなテーマを扱っているので。

附録の『赤い杭』もいいですな。
深夜のカフェに寄って、ただ麦酒をあおり続ける役人たち、という描写がゾッとさせられます。

中公文庫さんには、まだまだ埋もれている綺堂読物を発掘して、出版していただきたい。

次は、岩波文庫の『芥川龍之介随筆集』を読みますよ。

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