嗜虐

谷崎潤一郎『潤一郎ラビリンスⅠ 初期短編集』(中公文庫)を読みました。

いやあ、明治末期に既にこれだけの変態小説(褒め言葉です)が文学として受け容れられていた、というのはひとつの驚きでした。

とにかく登場人物は、すこぶるつきの変態揃いです。
収録作中、『少年』もいいですが、やっぱり第一等に気持ち悪いのは、『悪魔』の主人公ですね。
見染めた従妹の洟がついたハンカチを、○○しちゃうんだから!

あと、ウィキペディアとかで谷崎の履歴を見ていないので、よく知りませんが、彼はパニック症だったのでしょうか。
『悪魔』や『恐怖』の主人公は、鉄道に乗ると頭に血が上って、脳出血を起こすんじゃないかという恐怖ですぐに駅で降りてしまう、という病状です(Eisenbahnkrankheit 鉄道病、と書かれていますが)。
そこも興味深かったな。

この『潤一郎ラビリンス』シリーズは犯罪小説集、怪奇幻想倶楽部、分身物語といくつか読んでいましたが、Ⅰ巻の変態衝撃をもろに喰らったせいで、揃えることにしました。
谷崎の嗜虐と官能の世界をこれから存分に読めるというのは、楽しみなことです。

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