影男

題名通り、乱歩の『影男』再読。

読んでみて、「あれ、これってこんな話だったっけ?」と戸惑いました。
どうやら『大暗室』と記憶が混ざっていた部分があったみたい。

物語は、影男の異名を持つ正体不明の青年が、人生の裏街道を徘徊して、金持ちのゆすりのネタを見つけたり、別天地のような謎のパノラマ園で遊んだりしているうちに、以前知恵を貸してやった殺人請負会社に狙われ……という話。

はっきり言って、筋があるようなないような、とりとめのない話ですが、いかにも乱歩といった感じで楽しめました。

戦前の通俗物に比して、文体がぐっと現代的になっています。
しかし、ある部分だけ、会話文の後に(笑い)と書いてあるんですが、乱歩どうしちゃったんでしょ?
それが妙に気になりました。

乱歩的と言いましたが、サド・マゾヒズム描写から始まったり、お約束のパノラマなど、題材は乱歩的なのに、そんなにネトネトせずにアッサリ風味なのは、乱歩のお年が影響しているのでしょうか。

でも、意外におすすめです。

では、またんご。

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